砂の器 DVD-BOX |松本清張
砂の器 DVD-BOX
出演:
ビクターエンタテインメント
発売日 2004-05-28
これまでにもたびたび映像化されてきた松本清張の同名小説の連続ドラマ版
で、『白い影』でシリアスな演技に新境地を見出した中居正広が、ここでは
過酷な宿命を背負った天才ピアニスト役を熱演している。新進気鋭のピアニ
スト・和賀英良(中居正広)はその日もまた、コンサートに詰め掛けた観客
から拍手喝采を浴びていた。そんな和賀の前に、三木(赤井英和)という初
老の男が現われる。三木から「秀夫」と呼びかけられるたびに、そして懐か
しそうに昔話をされるたびに表情が曇る和賀。2人で飲み交わしたスナックの
帰り道に、ちょっとした拍子で和賀は三木を突き飛ばしてしまい…。
原作や映画では刑事の今西(渡辺謙)が犯人探しをしていくミステリー仕立
てだが、この連続ドラマでは追われる側の和賀が主人公に。犯人が犯した犯
罪のトリックではなく、なぜその犯罪が引き起こされたかに焦点があたる松
本清張サスペンスのスタイルとは合致しているようにも思えるが、昭和史的
な裏打ちこそがこの物語を分厚く見せるだけに、時代設定を平成に置き換え
たことでドラマの意味合いは少なからず変容してしまっている。(麻生結
一)
音楽そのものである 2006-04-06
この、サスペンスでは断じてない(主人公が犯行を犯すのを、第1話で視聴
者に開示しているのだから)、ヒューマン・ミュージック・ドラマの根幹が「音
楽」であることを力説する人は少ない。
そして、なんといっても、このあくまで「映像版『砂の器』」の素晴
らしさは、恩人をこの手にかけてしまった罪、その原因である「過去」、その
すべてを、「芸術作品」としての、ピアノ協奏曲「宿命」を作曲し、演奏す
ることで乗り越えようとするシナリオ(原作の小説とは大きく異なる)であ
り、『宿命協奏曲』の演奏をもって、罪の贖罪の最も重要な行為として、そ
の楽曲のフィナーレを、シナリオのほぼ最後に合致させた非凡な、極めて合
理的な、白人音楽的構想力にある。この「砂の器」は映画版の、「原作の『潤
色』」がなければ成り立たなかったろうが、それによって「砂の器」という虚
構は音楽そのものになった。特に『宿命』演奏開始後は。だから何度も繰り
返し視聴しうるのであるし、視聴してしまうのである。
レンタル版にない、Disc5の、「中居正弘『宿命』演奏シーン」の特
典は素晴らしい。一部しか実際には弾いてはいないだろうが、2楽章、20分強
の楽曲をほとんど覚えていることは体の動かし方でわかる。POPS系しか聴い
てこなかった可能性の高い中居正弘が、20分もの器楽曲を、音だけでも覚え
るのは苦労したに違いない。中居が、あれほど見事に和賀英良を演じきった
ことは、彼に対する評価を根本から変えてしまった。
是非、欧米で(たとえば主人公の父親が、第2次大戦下で、多くのユ
ダヤ人を人体実験の材料とし、人間の尊厳を、「国家のための作業・実験・報
告」として倫理性について思考停止し、自らは大戦終了後、南米に逃れ《こ
のあたり「放浪シーンにできそうだ》天寿を全うした「死の天使」、ヨーゼフ・
メンゲレの息子であるとか)リメイクして欲しいものだ。